第三講 二格の副詞

Ja, man bringt es[註1]es zu 〜 bringen: これは「……にまで漕ぎつける」,「……にまで出世する」という熟語で,es は熟語によくある無意味な es で,別に何を指すとか受けるとかいうことはない。 bestenfalls zum Sektionschef.
  そう,うまく行って課長になれる位のものだね。

bestenfalls は「最良の場合」という besten Falls (im besten Falle の意)を一語に書いたものです。こうなると,副詞句と副詞との区別は,そうはっきりとしているわけではないということになります。

また,ものによると,前半をなす形容詞が単に冠詞または冠詞類にすぎなかったり,また,前には何もつかず,単に名詞の二格だけだったり(abends 晩に,anfangs はじめに),また,もはや二格とすらいうことができない不合理な形だったり(nachts 夜間,japanischerseits 日本側では)します。つまり,-s さえつければ副詞のような感じを与えるということになったわけです。さきにドイツ語には副詞語尾というものが無いと申しましたが,それは一般の筋道としては無いという意味であって,部分的には,固定した形で,この -s がつまり副詞語尾だといってもよろしいでしょう。覚えておいてもよいような語例を少しばかり列挙します:

jedenfalls いずれにせよ
notfalls いざという場合には
nötigenfalls 必要とあれば
erforderlichenfalls 要すれば
gegebenenfalls 場合によっては
allerseits 皆様がたに
meinerseits 私は私で
behördlicherseits 官庁側では
beiderseits 双方で
einerseits 一面において
hinterrücks 背後から
unverrichteterdinge なすところなく
schnurstracks まっすぐに,一路
geradeswegs まっすぐに,一路
spornstreichs まっしぐらに
nächtlicherweile 夜間
mittlerweile そうする間に
sonderbarerweise 奇妙なことには
glücklicherweise 幸にして
einigermassen 多少
gewissermassen 謂わば
allerorten 到るところで
kurzerhand あっさりと
landeinwärts 奥地の方へ
stromaufwärts 河を遡って
heutigentags 現今では
allerdings もちろん
platterdings 全然,まったく
unterwegs 途中で
keineswegs 決して
mit[t]schiffs (船の)中央部に
längsseit[s] 舷側に
vornschiffs 舳寄りに
innenbords [船の]内側に
außenbords [船の]外側に
unversehens 不知不識の間に
hierlands 当国では
stillschweigends 言わず語らず
nachgehends 後ればせに
eilends 急いで
anfangs 始めに
augenblicks 直ちに
eingangs 劈頭に
winters 冬に
sommers 夏に
frühlings 春に
herbstens 秋に
tags, des Tages 日中
abends, des Abends
morgens, des Morgens
nachts, des Nachts
nochmals もう一度
ehemals
damals 当時
bereits すでに
stets 常に
anders 別な風に
längs 縦に
flugs すばやく
öfters しばしば
besonders 特に
rechtens 当然
rechts 右に
links 左に

単なる見本の陳列にすぎませんが,だんだんと見て行くと,名詞だけのがあるかと思うと,おしまい頃に至っては,逆に形容詞だけが -s によって副詞になってしまうという,つまり要するに -s は副詞語尾なんだという感じをうけるようになってきました。

des öfteren  類似,屡々(等)

これは少し特殊なことになりますが,単に oft, oftmals (しばしば)といえばよいところを,少し調子をあげて格式張ると,des öfteren とか zum öfteren とかいうことがあります。この des öfteren のような奇妙な形の副詞があることだけは一応知っておいてよいでしょう。

des weiteren これ以上に亘って
des mehreren (同)
des längeren (同)
des breiteren (同)
des ferneren (同)
des näheren 更に詳しく
des einzelnen 個々の場合に就て
des bestimmtesten きっぱりと,はっきりと
des entschiedensten 断乎として
des ehesten 速やかに
des vorläufigen 只今のところ

最高級 -stens

Danke bestens ! (どうもありがとう!)などでもわかる通り,殊に社交辞令としての副詞には -stens の語尾が相当はびこっています。これは aufs beste (auf das 〜ste; auf 〜ste) という形とほぼ同じものです:

schönstens くれぐれも,厚く
wärmstens (empfehlen) 篤く,切に,恵心
schnellstens いちはやく
raschestens (同)
strengstens 厳に
genauestens つまびらかに
schärfstens きつく,きびしく

けれども,こういう仰山な用語は,まず用いない方がよいとされています。aufs schnellste などといえば十分なのですから。

ただ,限度を表現する副詞ではここの -stens が普通です(もちろん aufs 〜ste, zum 〜sten でもよいのですが):

wenigstens すくなくとも
mindestens (同)
höchstens たかだか,せいぜい
längstens 長くて
spätestens 晩くとも
frühestens 早くて

また,-st だけの語尾も(社交辞令では)用いられます:

gütigst なにとぞ
freundlichst (同)
liebenswürdigst (同)
untertänigst 謹んで
inständigst 切に
angelegentlichst 切に,折り入って
verbindlichst (danken) 厚く

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