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ドイツ語と英語とは元来おなじ系統(ゲルマン系)に属する国語ですから,基礎単語はみなよく似ています。(ただ英語の方は,全然系統のちがうラテン系統の語がたくさん基礎単語にはいっているから,それは別です。たとえば「非常に」を英語では very といい,ドイツ語では sehr 「ゼール」というとか,一時間は英は hour,独は Stunde 「シュトゥンデ」というなんてのは,これは英語の方のがラテン系語ですから,全然似ていない筈です)。

英の in が独でも in,英の gold は独でも Gold [ゴルト],英の fish が独でも Fisch なんてのは,これは改めて申すまでもありますまい。

知識として重要なのは,よく似ていて少しちがう場合です。fishsh と Fisch の sch ぐらいは気がついたところで大しておもしろくもありませんが,気がつくと大変おもしろくなって,しょっちゅう注意するようになり,注意するようになると注意のおかげで単語がよく頭に入るという,多くの語に共通な一般法則というものが多少あります。それを紹介して,英独両語に関する単語の知識を補強しましょう。

まず第一則:語頭ではなく,語末あるいは語中の英語の t は,ドイツ語では「ス」の音(即ち ss か ß かのどちらか)になる

water Wasser
better besser より良き
white weiß 白い
sweet süß 甘い
sweat Schweiß
foot Fuß [フース]
nut Nuß [ヌス] 胡桃
bite beißen 噛む
eat essen 食う
hate hassen 憎む
let lassen …せしめる
greet grüßen 挨拶する
great groß 大きな
hot heiß 熱い

もっとも,歴史的な関係をよく知らない人は,hot と heiß とが同語であるなどと聞かされると,何だかこじつけみたいな気がするかも知れません。似ているのはただ h だけで,あとはみんな似てもつかない別物ですからね。しかし,これから紹介する法則がわかってくると hot と heiß とはなるほど同一物だということが段々うなづけるようになります。(英の o は独の ei なのです,stone が Stein [石],one が ein,holy が heilig,two が zwei など,いずれ後で紹介します。)

sweet が süß (ee = ü) というのも green が grün,greet が grüßen なのでわかりましょう。また実際 ü の発音は,ユーというよりはむしろ ee に近いのです(即ちイーにです)。