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英語の chamber (室)もドイツ語の Kammer (室)も,ともに camera というラテンの俗語から派生したものですが(Kamera は現に「写真機」の意に用いています。これは「暗室」の意から撮影機そのものの意に変ってきたものです),英語の方には,一見理由のない b が入りこんでしまっていますが,これはフランス語の chambre を通じてこんなことになってしまったのです。m を強く発音すると,鼻をひびかせるだけでは物足りなくて,ついでに唇をも景気よくふるわせて b または p を発音したくなるのは自然の勢で,多くの語にこの現象が見受けられます。

chamber Kammerンメル, f.
timber Zimmerィンメル, m. (材木)室
slumber schlummernシュンメルン まどろむ
number Nummerンメル, f. 番号
whimper wimmernィンメルン 鼻をならす,泣く

うしろに -er という語尾がつかない場合には,英語では m の次の b は発音しません(climb, クライム,climbing, クライミング,攀登など)が,むかしはおそらく発音したものだろうと推定されます。しかし現在ではサイレントになってしまっているので,結局 b を書かないドイツ語と,発音の上では大した違いはなくなったわけです。

climb klimmenクリンメン 登る
comb Kammカム, m.
thumb Daumenオメン, m. 拇指
dumb dummドゥム 唖の,馬鹿な
lamb Lammラム, n. 子羊
crumb Krumeクルーメ, f. パン屑
clampクランプ Klammerンメル, f. (締め金)括弧

clamp の如く,p は発音します。

dumm のほかに dumpf (陰気な)という形容詞もありますが,この方は pf がついています。

英語にはまだこの外 womb [ウーム] (母胎,子宮)とか limb [リム] (四肢,手足)とか tomb [トゥーム] (墓所)とかいう似たのがありますが,これらには該当するドイツ語がありません。

ただ一つの例外は,atom bomb (原子爆弾)などという bomb [ボム] (爆弾)で,これは最近用いだした語ですから,ドイツ語でも Bombe [ボンベ] です。