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英語の day, way がドイツ語の Tag, Weg にあたるのでもわかる通り,或種の場合に於て英語の y がドイツ語の g に相当することは,初学者のすぐに気付く現象です。これは,ドイツ系諸民族のうち,北海岸に近いところにいた各族(即ち英人,オランダ人その他)が,g をごくやわらかに発音したために,g がすべて母音のようになってしまったのです。(今でもオランダ人の g の発音は k のようではなく,非常にやわらかです。ドイツ人の中でも,ベルリンより北の方では,g を j と同じに発音します。Ganz gut! を「ヤンツ・ユート!」と云うのです)。

綴頭の g には,力が入りますから,この軟弱化現象はごくわずかしか見受けられません:

yesterday Gesternゲステルン 昨日
yellow gelbゲルプ 黄色の
yarn Garnガルン
yard Gartenルテン, m. 庭,庭園
yawn gähnenーネン 欠伸する

綴尾においては,古いことばは殆ど例外なく g が y になっているか,あるいは完全に母音化して i となっています:

day Tagターク, m.
way Wegヴェーク, m.
say sagenーゲン 云う
honey Honigーニヒ
penny Pfennigェンニヒ, m. (貨幣)
fly Fliegeーゲ, f.
eye Augeオゲ, n.
may mögenーゲン (助動詞)
lay legenーゲン 横たえる
slay schlagenシューゲン (屠殺する)打つ
fifty fünfsigュンフツィヒ 50
sleepy schläfrigシューフリヒ 眠たい
rosy rosigージヒ 薔薇色の
sunny sonnigンニヒ 日ざしの温かな

綴の中部では,y は(単に書方の問題ですが)大抵 i となっています。その場合大抵ドイツ語の二綴が英語では単綴になってしまいます:

rain Regenーゲン, m.
sail Segelーゲル, n.
nail Nagelーゲル, m.
hail Hagelーゲル, m.
hill Hügelューゲル, m.
rule Regelーゲル, f. 規則
tile Ziegelィーゲル, m. タイル,瓦
rail Riegelーゲル, m. (レール)かんぬき
flail Flegelーゲル, m. からざお
roe Rogenーゲン, m. 魚卵,はらご
seal Siegelーゲル, n. 印璽

上例中,g が必ずしも i となっていないもの(seal, roe, rule)もありますが,それは前に来る母音の関係です。前に s または o と発音する a が来ると,英語の癖として w となります:

own eigenイゲン 自分自身の
fowl Vogelォーゲル, m. 鶏,鳥
bow Bogenーゲン
bow biegenーゲン 曲げる
bow beugenイゲン 曲げる
Bugブーク, m. 船首
saw Sägeーゲ, f.

綴尾の -lg, -rg は,その次にどんな綴母音が来ようと,英語ではすべて -llow, -rrow となってしまいます。アクセントのないお尻尾の方はすべて好い加減に発音してしまうという英人の癖があらわれているわけです。

morrow Morgenルゲン, m. (古)朝,朝
sorrow Sorgeルゲ, f. 悲痛,心配
follow folgenォルゲン 従う
borrow borgenルゲン 借りる
gallows Gargenルゲン, m. 絞首壷
bellows Blase-balgーゼバルク, m. ふいご
billow Bulgeルゲ, f. (大浪) [方言] 大浪
swallow schwelgenシュェルゲン (嚥み下す) 耽る

r, l の次に(g のみならず)ch や k や b が来る場合にも,英語ではすべて無差別に rrow, llow となります:

furrow Furcheルヒェ, f. 畝間の條溝
marrow Markマルク, n.
yellow gelbゲルプ 黄色の
swallow Schwalbeシュァルベ

こうした英語の癖のために,「燕」 (Schwalbe) も「のみ下す」,「耽る」(schwelgen) も,両方とも英語では swallow となって,全然一語となって見えるわけです。漢字でも「燕」と「嚥下する」との相似がありますが,これでおぼえておけば忘れません。